2023/02/20 09:00

ワインは、その産地や品種、製造方法によって様々な味わいがありますが、一般的に樹齢が古いほど美味しい傾向があるとされています。
この記事では、その理由について説明します。

エピジェネティクス(epigenetics)とは何か

ワインの味わいには、ブドウの品種や土壌、気候などが大きく影響しますが、近年、エピジェネティクスという分野で、樹齢が味わいに影響するという研究結果が報告されています。
エピジェネティクスとは、遺伝子の発現に影響を与えるメカニズムのことで、環境要因によって遺伝子の発現が変化することがあります。
遺伝子はDNAの中に存在し、遺伝子の情報がRNAを介してタンパク質に変換されます。しかし、全ての遺伝子が同じタイミングで発現するわけではありません。遺伝子の発現は、細胞の状態や外部環境によって変化するため、遺伝子の発現を制御するメカニズムが必要となります。エピジェネティクスは、このような制御メカニズムの一つであり、遺伝子の発現に重要な役割を果たしています。
つまり、同じ遺伝子を持つ植物でも、環境が違えば発現が異なるということです。

ワインの樹齢とエピジェネティクス

では、なぜワインの樹齢が高いほど美味しい傾向があるのでしょうか?その要因の一つとして、ワインの樹齢が高いとその樹木自体のエピジェネティクスの状態が安定しているためだと考えられます。

ワインの樹木は、長い年月をかけて様々な環境ストレスに耐え抜いてきます。例えば、根からの水分不足や、風雨などの気象条件の変化などです。これらのストレスに対して、樹木は自己防衛メカニズムとして、エピジェネティクスの状態を変化させ、遺伝子の発現を調節します。

樹木が長い年月をかけて様々な環境ストレスに耐え抜いた結果、その樹木のエピジェネティクスの状態が安定し、遺伝子の発現が適切に調節されるようになります。その結果、古木から収穫されたブドウから作られたワインは、若木から収穫されたブドウから作られたワインよりも、より複雑で深い味わいを持っているとされています。

また、このようなブドウの木は環境に適応しているためよりテロワールを反映したワインになりやすいとも言われています。

まとめ

ワインの味には様々な要因がありますが、樹齢が高いブドウから作られたワインは、若木から作られたワインよりも高い品質が期待できます。この傾向は、エピジェネティクスによる遺伝子発現の変化によって説明される可能性があります。古木から収穫されたブドウから作られたワインは、より複雑で深い味わいを持っているとされているため、ワインを選ぶ際には樹齢にも注目してみると良いかもしれません。